夏の暑い日の運動は熱中症を予防した対応が必須です。その中、安全で効果的な運動を行うためには原理原則を守りながら熱中症予防を行うことが重要です。
熱中症予防のための運動指針
暑いとき無理な運動は事故のもと
気温が高いときほど、また同じ気温でも湿度が高いときほど、熱中症の危険性は高くなります。
また、運動強度が高いほど熱の産生が多くなり、やはり 熱中症の危険性も高くなります。
暑いときに無理な運動をしても効果はあがりません。
気温が24℃以上は、運動するのには要注意で何らかの対応が必要になります。
急な暑さに要注意
熱中症事故は、急に暑くなったときに多く発生しています。
急に暑くなったら、軽い運動にとどめ、暑さに慣れるまでの数日間は軽い短時間の運動から徐々に運動強度や運動量を増やしていくようにしましょう。
気温と運動の関係
熱中症予防の運動指針では、気温と運動の関係を表にしています⬇︎。
乾球温度は、普通に測定する気温を表しています。温球温度は、球部を水で濡らしたガーゼで包んだ温度計で測定した温度です。
24℃以上は要注意、運動するときに何らかの対応が必要になることを覚えてください。
- 24-28℃:注意(積極的に水分補給)
- 28-31℃:警戒(積極的に休憩)
- 31-35℃:厳重警戒(激しい運動は中止)
- 35℃以上:運動は原則中止
気温を変えることはできませんが、室温は変えることができます。
室内で行う運動なら温度と運動の関係を知って適切な温度管理に努めましょう。
出典:公益財団法人日本スポーツ協会ホームページ
効果をだすための3つの原理
1.過負荷の原理
ある程度の負荷を与えないと運動効果が得られません。
毎日の日常生活動作で動いていても、体力維持の効果はありますが、体力はアップしません。
毎日の日常生活動作に少しでも負荷を加えると効果がでます。
例えば①:椅子から立つ時→いつも1回のところを余計に2回行う。
例えば②:駅まで車を使っているのを→歩きに変える。
2.特異性の原理
運動の方法によって効果が違うということです。
例えば①:短距離走の練習→短距離走に効果○、長距離走△
例えば②:高重量の筋力強化→筋力増強効果○、持久力△
例えば③:下半身の筋力強化練習→歩行に効果○、更衣(シャツの着脱)△
例のように、運動方法によって得られる体の効果が変わります。
関連する動作であれば能力が高くなりますが、関連しない動作なら効果は薄いです。
3.可逆性の原理
運動によって得られた効果が、運動をやめてしまうと戻ってしまうという原理です。
教科書的には、↑の説明の通りなんですが、でも無駄になるということではありません。
ちょっと追記しますと、運動の効果は2つに分かれます。
1.運動認知、運動学習(スキルの向上)の効果
これは、自転車に乗れるようにトレーニングします。
トレーニング効果で自転車に乗れるようになりました。
自転車を乗れるようになったという運動学習効果は自転車を乗らなくなっても効果が持続します。
2.身体の構造上の効果
これは、筋肉や骨、関節が運動によって強くなった効果です。
自転車のトレーニングで得られた筋力や骨・関節が強くなった効果は、やめると元に戻ります。
※可逆性の原理は、筋力や持久力など身体的効果のことであり、認知レベルは必ずしも可逆性の原理ではありません。決して1度行った運動は無駄にはなりません。
効果をだすための6つの原則
1.意識性の原則
トレーニングの内容や目的を理解して行うと効果的という原則です。筋力強化練習を行う時に、どこの筋肉を刺激しているのかを理解してその筋肉に意識を集中して運動するのと、意識しないで運動するのでは効果が全く違うということです。
例えば、お尻のヒップアップを目的に歩く練習をするのであれば、歩く時にお尻の筋肉に集中して、手で触れたりしながら意識して力を入れながら歩くと普通に歩くより、お尻の筋肉の筋出力がアップします。
2.全面性の原則
全身の筋をバランスよく鍛えること、パワーだけでなく柔軟性も持久力もバランスよく鍛えると効果的であるという原則です。
リハビリで歩行練習するとき、前方歩行だけでなく、横歩きや後ろ歩きなど組み合わせて行うと歩行能力を効果的に高めることができます。
3.専門性の原則
競技種目の違いやリハビリテーションの目的にあった運動を行うことです。
スポーツ復帰を目的とした運動であれば高強度の運動が必要になります。
高血圧のリハビリテーションでは低強度の運動を行い、高強度の運動は禁忌となります。
目的とするスポーツ種目や運動で使われる筋活動パターンに合わせて運動を行います。
4.個別性の原則
身体能力や運動能力は個々に違います。
1人1人の能力にあった運動を行うことが安全で効果的な運動となります。
5.漸進性の原則
体力やスキルが向上したら、少しずつ運動の課題や強度を高めていくという原則です。
いつも同じトレーニングで同じ負荷量で行っていると維持はできるが向上する効果は望めません。
6.反復性、周期性の原則
体力やスキルを高めるには、一定期間に繰り返し運動を行うようにするという原則です。
特に運動学習(スキル)を高めるためには毎日のように頻度を高めた方が効果的です。
筋力増強の高強度運動であれば同一部位を頻回に行うことはかえって炎症(筋肉痛)を引き起こし、回復する時間を与えないことになりますから休みを入れて週2〜3回が良いと考えます。
病院で行うリハビリが毎日行うのは、運動学習(スキル)を高める上で効果的だと言えます。
安全な運動を行うためのポイント
他人とお喋りしながら続けられる運動
ランニングなら、分速120〜150mで毎分8.9〜10.3kcalの運動になります。最大運動能力の60%以下の運動で有酸素運動になります。
汗のでかたは、滝のような汗でなく、じんわり汗ばむ程度の運動になります。
運動中や運動後に苦しさや痛みを感じない
運動習慣があり、スポーツ種目のためのトレーニングは別です。
一般人や運動習慣のない人は、運動強度が高すぎて高血圧状態や関節を痛める危険があります。まずは、低強度の運動から始めましょう。
翌日に疲れや痛みが残らない
リハビリを実践している時に良く使うフレーズですが、運動学習効果を得るためには頻回に運動することが必要ですが、翌日に疲れや痛みを残してしますと、その状態でリハビリすると痛みが増強してかえってパフォーマンスが後退します。
翌日に痛みや疲れが残らないように運動しましょう。
運動強度をすぐアップしない
運動してから身体に筋力増強効果が現れるのに時間がかかります。
骨折後の歩行練習では、初めは免荷(体重をかけない)から初め、体重の1/3荷重、体重の1/2荷重、体重の2/3荷重、全荷重と1〜2週間毎に段階的に進めます。
これは、骨治癒には時間がかかるからです。
身体ができていないのに運動強度だけアップするのは危険です。
1週間の中で休み日を作る、体調の悪いときは休む
筋力増強のメカニズムは、トレーニングで筋肉に刺激して炎症を起こし、休んでいる時(回復期)に成長ホルモン分泌され筋力が増量します。
運動したら体を休ませるというサイクルが効果的です。
炎天下の運動は行わない
運動には水分が必須です。炎天下では水分不足になりやすく体温調節や代謝産物の調整に必要な水分が不足します。
また、炎天下では消耗が激しく運動に集中できないため、運動学習効果を高めるには適さない環境です。
寒冷時には体を保温する
炎天下とは逆ですが、寒冷により血管が収縮し血行が悪くなります。
血管が縮んだ状態で運動により心肺に負荷を与えると、血圧が上昇しやすく危険です。
また、筋肉も寒さにより硬くなっているので、ケガしやすくなっています。
急激な血圧上昇やケガを予防するためにも体を保温しましょう。
栄養や睡眠を十分にとる
栄養は身体を作るための材料になります。材料が不足している状態で運動だけしても効果は得られません。
睡眠は筋肉の発達、疲れをとるためにも重要です。特に夜の11時〜12時、2時〜3時は睡眠のゴールデンタイムと呼ばれ成長ホルモンが多く分泌される時間帯で大切です。